「よくも申したな! よかろう、ならばおぬしのその自信の拠り所を述べてみよ!」 「だって私は姫が大好きだから、考えていることはすぐにわかるよ」 「……」 何故かエルシードは真っ赤になってもじもじと俯いてしまった。その上気した愛らしい頬を横目で見て、シャラザードはくすくすと笑っている。だが、ヴァレリー当人はきょとんとしていた。 「もう一度聞くけど、姫は嘘をつかないんだろ?」 「う、うむ」 「じゃあ、今姫が考えていることは、『ヴァレリーにはあの人形はやらない』だ」 「ん? 何じゃと、わたしは別にそんな事など・・・・むう」   最初は否定しようとしたエルシードだったが、明敏な彼女である。さすがにすぐにヴァレリーの言葉の意味に気付いた。してやられたといわんばかりの沈黙である。エルシード が、不愉快そうな様子ではなかった。 その証拠に、エルシードはしばらくたってからにっこりと笑って口を開いた。 「つまり、こういうことじゃな」  エルシードはヴァレリーによるペテンの説明を始める。 「もしも、『ヴァレリーには人形をやらない』というのが正しくわたしの考えていることならば、おぬしはわたしの考えを言い当てたことになるので、わたしはおぬしにあの人形をやらねばならない。  逆に、『ヴァレリーには人形をやらない』というのが誤りであるのならば、わたしは『ヴァレリーにあの人形をやる』と考えていることになるので、嘘をつけないわたしはやはりおぬしにあの人形をやらねばならないということになる。なかなかやるではないか。無学なおぬしにしては上出来である」 口では平静を装っていたが、エルシードは内心舌を巻いていた様子である。 「わからんやつじゃ。いつ明敏なところを見せるかさっぱりわからん。根本的にダメ人間のくせに」 「……ありがとう」 「ばかもの、ほめとらんわ!!」 「……」 「むう、まあ、仕方あるまい、約束通りあの人形はおぬしにやろう」  というわけで、ヴァレリーはエルシードの人形を腕に抱えて、いそいそと自分の部屋に帰っていったのだった。  彼がその人形をどういうことに使ったのかは、ジハード本編の第二巻を参照していただきたいのである。